発言技能を高める     1999年 9月25日(土)  徳田

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◇ 「発言技能が高い」とは,子どもたちがどのような発言をしたときに言うのだろう。
  今回は,このことについて述べる。
  発言技能を便宜上次の二つに分ける。

1 発言内容                                
2 発言の仕方                               

  1の「発言内容」は,「どんな内容の発言をしたか」ということである。2の「発言
 の仕方」は,例えば発言するときの「声の大きさ」などである。
  今回は述べるのは,1の「発言内容」についてである。

1.解釈内容の判断を迫る「発問・指示をする」
  例えば次のような問いを出したとしよう。
  5年生の2学期教材・物語文「いたいいたい虫」での問いである。

確認 ぼくは,クニ子先生から手紙をもらいました。              
発問 手紙をもらう前と比べて,クニ子先生の病気はよくなっていますか。    
指示 「よくなっている」「変わらない」「悪くなっている」のどちらかをノ−トに
  書きなさい。                              


「判断させる」
  この問いに対し,上の三つのどちらなのかを子どもたちは「判断する」ことになる。
  「判断する」元は,例えば次の三つである。

1 教材文                                 
2 教材文を読んで残った記憶                        
3 教材文+教材文を読んで残った記憶                    

  どちらを判断したのか挙手で確認する。私の学級では次のようになった。

 よくなっている 20人                          
 変わらない    8人                          
 悪くなっている  5人                          

  この後,次の二つのことが話し合われることになる。

1 そう判断した理由                            
2 どの判断が正しいのかという検討                     


3.証拠になる文や言葉を指摘させる
  この二つの話合いが活発に行われるために,どのような指示をし,どのような作業を
 させたらいいのだろう。
  次のように言った。

発問 どこからそれが分かりますか。                     
指示 証拠になる文や言葉に線を引きなさい。                 
   「これは証拠になる」と思うものをたくさん探して,線を引きなさい。   

4.証拠になる文や言葉の意味づけをさせる(それが証拠になる理由は?)
  しばらくして,追加指示を行う。

発問 どうしてそれが証拠の文になるのですか。                
指示 「これはこういうことを言っているから」と,その文を選んだ理由も言えるよ
  うになっておきなさい。                         


5.発言技能を高める四つの働きかけ
  以上の三つが,「発言技能」を高めるために私が行った働きかけである。どのような
 類いの働きかけを私はしたのか,以下に整理して示す。

1 「解釈内容」を選択肢にして発問・指示した。               
2 解釈内容を判断(選択)させた。                     
3 2の根拠となる文や言葉を指摘させた。                  
4 指摘した文や言葉の意味付けを求めた。                  

  以上が発言技能を高めるための教師からの働きかけである。

6.発言形式のモデルを示す
  この後,先に書いた二つの話し合いに入る。
  ここで私は言う。

説明 「よくなった」という20人の人から理由を発表してもらいます。     
指示 「私はよくなったと思います。                     
    何ペ−ジの何行目に,こう書いてあります。              
    これはこういうことです。                      
    だから,よくなったと思います。」                  
   という言い方でいってみて。                      
  (「私はよくなったと思います。                     
    何ペ−ジの何行目に,こう書いてあるから,              
    こう思いました。                          
    だから,よくなったと思います。」                  
指示 指名しませんので,言いたい人から起立してどうぞ。           

  子どもたちは,この後どのような発言をしたのだろう。以下に示す。

1 ぼくは,クニ子先生の病気は「よくなっている」と思います。        
2 98ペ−ジの後ろから4行目に                      
3 「これでやっと,いたいいたい虫とさよならができると,楽しみにしていたのに
 まだやってきては,長いことを遊んでいくのです。」と書いてあります。    
4 病気のもとのいたみのことを「遊んでいくのです」と言っているぐらいだから,
 病気はよくなっていると思います。もし,病気が悪くなっているのだったら,こん
 な言い方をクニ子先生はできないと思います。                
5 だから,クニ子先生の病気は「よくなっている」と思います。        

1 私は,クニ子先生の病気は「よくなっている」と思います。         
2 98ペ−ジの後ろから1行目に                      
3 「大急ぎでこの手紙を書いています。」と書いてあります。         
4 もし,病気が悪くなっていたら,こんなに大急ぎで手紙は書くことはできないと
 思います。                                
5 だから,クニ子先生の病気は「よくなっている」と思います。        

1 私は,クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。         
2 98ペ−ジの前から6行目に                       
3 「先生はあれからまた手術をした」と書いてあります。           
4 病気が悪くなったのだから,手術をしたのだと思います。          
5 だから,クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。        

1 私は,クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。         
2 98ペ−ジの後ろから3行目に                      
3 「まだやってきては,長いこと遊んでいくのです。」と書いてあります。   
4 「長いことを遊んでいく」ということは,いたみが長く続くということだから,
5 クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。            

1 私は,クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。         
2 99ペ−ジの前から4行目に                       
3 「すぐおなかの中にやってくるのよ。」と書いてあります。         
4 すぐおなかの中にいたみがやってくるんだから,              
5 クニ子先生の病気は「悪くなっている」と思います。            

 整理すると,子どもたちの発言内容は以下のようになる。

1 結論(解釈内容)を言う。        1.結論            
 「私は,こう思います。」                         
2 証拠のありかを示す。        
 「何ペ−ジの何行目に」         
3 証拠の文や言葉を読む。        
 「こう書いてあります。」        
4 その文や言葉の解釈を述べる。     
 「これはこういうことを言っています。」 
                
                
                
2.理由・根拠         
                
                
                
 「これはこういうことだと思います。」 
5 再度結論を言う。                            
 「だから,こう思います。」        3.結論            

  発表する前に,子どもたちには次のように発言するよう指示する。すると,証拠を挙
 げ,それに自分の解釈も加えて発言をできるようになる。








「私は,こう思います。」                        
「何ペ−ジの何行目に」「こう書いてあります。」             
「これはこういうことを言っています。」                 
「これはこういうことだと思います。」                  
「だから,こう思います。」                       






という言い方で言ってごらん。                        

  この後,「悪くなった」「変わらない」の順で理由を発表させる。
  それが終わったら討論である。次の指示で討論を始めさせる。

発問 相手の考えを聞いて,「これはおかしい」「これはどうかな」と思った人はい
  ませんか。                               
指示 ある人は,反対意見をどうぞ。自由にどうぞ。